百田尚樹著「海賊とよばれた男」。
本屋大賞1位にも選出され、大きな話題をさらった歴史小説である。
最初タイトルを見た時は「海賊」というネーミングから、
漫画「ワンピース」の様な冒険物のフィクションだと思っていたが、
これは実在した人物をモデルに描かれた物語で、
その内容は現代の日本人が学ぶべき「真の日本人像」の
エッセンスがふんだんに散りばめられた、超大作だ。
この物語の主人公である国岡鐡造は、出光興産の創始者である
出光佐三氏であり、物語は国岡鐡造の幼少期から、その生涯を
終えるまでの壮絶な「石油をめぐる戦い」を描いたものだった。
内容は是非、本を買って読んで欲しいところだけれど、
何よりも感動するのは、国岡鐡造の人としての器の大きさと、
日本人としての誇り高き生き方に他ならない。
物語でも国岡商店は「石油」を扱う小売店として描かれて
いるが、戦前は日本の石油統治に苦しめられ、
戦後はGHQの石油政策に苦しめられ、その後は
アメリカやイギリスの「石油メジャー」との闘いを強いられる。
その闘いの多くが、自社の利益や利権を貪る為だけの
エゴイズムに満ちた策略に、「国民の利益」や「国家の利益」
を最優先に考える国岡鐡造が立ち向かうという構図になっている。
この国岡鐡造という人(出光佐三)は、店員(社員)を家族と
して迎い入れ、どんなに厳しい環境でも馘首は行わなかった。
「人こそが最大の財産」である事を行動で示し、
その鍛え抜かれた店員と共に国家の為に、日本国民の未来の
為に懸命に「民族企業」を守り続けた。
他の企業が次々と外資の石油会社に提携という名の
事実上「吸収」をされている最中に、である。
この小説は、日本を取り巻く石油がどれだけ国家に影響を
与えたのか、戦争に影響を与えたのか、又外国との関係に
影響を与えたのか、という「石油」の歴史的な流れを学べる
と同時に、物事の本質とは何か?という事も教えてくれる。
「ビジネスとは利益を生む事だ」という声も多いが、
その様な利益や利権は、一部の企業により独占され、
国民全体の利益に繋がらない事は多いと思う。
(特に発展途上国においては)
そんな中、利益よりも大切な事、即ち「国民への利益」や
「国家の発展」を第一の目的とする企業・人間があると
するならば、それこそが国岡商店だった。
どんな苦境や妨害にも屈することなく、懸命に自分の思う道を
突き進んでいく鐡造の姿に胸が熱くなる読者も多いと思う。
自分も「正しい事」「日本の利益になる事」を考えられ、
それを首尾一貫した行動に落とし込めるビジネスマンになりたい
と心から思う。
タイトルの「海賊とよばれた男」の「海賊」とは、
本を読んでいけば分かることなので、特には書かないけれど、
現代の日本にも「国岡鐡造=出光佐三」の様な
侍が必要だと感じるし、この本が多くの人の心に眠る
「日本人としての心・美徳」を呼び起こすきっかけと
なっていけば更に素晴らしいと思う。
これはただの歴史小説ではなく、日本人が一度は読むべき
ビジネス書としての価値もある。