2012年2月26日日曜日

人は何の為に命を差し出すのか?






10年後に切腹を言い渡された、元藩の要職の男。

残された時間で与えられた役割は家譜編纂。

藩内で刃傷沙汰を起こしたが、切腹を逃れその男の監視役を

任された男。二人が家譜編纂を通して掴んだ事実とは・・。

又、なぜ男は切腹をしなければならなかったのか。


「蜩の記(ひぐらしのき)」は歴史小説というジャンルだが、

事件を紐解いていくサスペンスの要素や、

 人としての生き方、男としての生き方、

武士としての生き方とは何かと考えさせられる哲学的な要素も

含まれていて、非常に内容の濃い作品だった。

文中には難しい表現が多々あったり、登場人物やその関係性が

複雑で分かりづらい部分もあったが、それはそれで味があるし、

この作者は歴史に関して非常に深くまでリサーチされているんだなと

感じた。さすが直木賞受賞の作品だと思う。

その中から心に残った文章を抜粋すると、

「口に出せば愚痴になりましょう。志を果たしたと思うのなら、


源吉のように笑っておればよいのです。」

これは、武士は志があって行った事に対して後悔の念ではなく、

そのことに対する誇りを持ちなさいということだと感じ取れる。

「人は心の目指すところに向かって生きているのだ。


心の向かうところが志であり、それが果されるのであれば、


命を絶たれることも恐ろしくはない。」

命が燃え尽きるまで、真剣に物事にたいしてぶつかっているのか?

人は「覚悟」を持ったときに輝いていく。そういうメッセージだと捉えた。

さて、じぶんの「いのち」は何の為に在るんだろうか?

一読の価値あり。

old fashionedかもしれないけれど、日本人が思い出すべきことを

再確認させてもらえた。


0 件のコメント: